日本薬理学雑誌
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新しい非ステロイド系抗炎症薬4-(p-Chlorophenyl)-2-phenyl-5-thiazoleacetic acid(CH-800)のラット胃腸管に対する刺激作用について
田端 敬一大槻 浩岡部 進
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1979 年 75 巻 8 号 p. 829-836

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抄録

非steroid系の新しい抗炎症薬CH-800および数種の市販の薬物のラット胃腸管に対する刺激作用の有無を比較検討した.いづれの薬物も1回経口投与により用量依存的に腺胃部に粘膜潰瘍を発生させた.UD50値(50%潰瘍発生量)で刺激作用の強さを比較すると次の順序であった;indomethacin>diclofenac Na>ibuprofen>aspirin>CH-800>phenylbutazone.5日間連続投与では,CH-800は用量依存性を示さず,胃粘膜に小さな潰瘍を誘発した.他の薬物も胃に潰瘍を発生させたが,潰瘍係数,および発生率ともに用量に依存して増加した.UD50値では,indomethacin>diclofenac Na>ibuprofen>aspirin>phenylbutazoneの順であった.小腸粘膜に関しては,indomethacin,diclofenac NaおよびCH-800が1回投与で潰瘍を誘発した.5回連続投与ではaspirinを除く全ての薬物が小腸潰瘍を発生させ,UD50値では次の順序で弱くなった;indomethacin>CH-800=diclofenac Na>ibuprofen>phenylbutazone.酢酸潰瘍の自然治癒過程に対するCH-800および各種薬物を投与した結果,潰瘍発生4日目から5日間投与することにより,indomethacinを除く各薬物は潰瘍の治癒を有意に遅延させた.発生20日目から投与した場合,phenylbutazoneのみが有意の治癒遅延を引起した.50日目からの投与では,CH-800,phenylbutazone,diclofenac Naおよびibuprofenが有意の潰瘍の再燃,再発効果を示したが,CH-800の作用は後の3薬物に比較して弱かった.以上の結果から,CH-800は他の市販の抗炎症薬との比較においては安全性は高いと考えられる.しかし,潰瘍患者あるいは潰瘍歴のある患者にはCH-800のみならず,他の非steroid系抗炎症薬の使用は制限または控えるべきことが示唆された.

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