日本薬理学雑誌
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Labetalolの循環器系に及ぼす作用についての実験的研究
門間 芳夫奥岡 ゆか子亀田 治子田辺 恒義安孫子 保市原 和夫
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1980 年 76 巻 4 号 p. 239-254

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抄録

αおよびβの両受容体を遮断する作用を持つlabetalolの循環器系に及ぼす作用を検討した.labetalolは麻酔イヌの心拍数,動脈血圧および心収縮力を減少させ,頸動脈洞反射を抑制した.labetalolのこれらの作用は用量依存性であった.またこの薬物は動脈血のpO2,pHおよび腎機能に対し何等の影響も及ぼさなかった.モルモットおよびラットの摘出心房標本,ウサギ摘出心臓灌流標本および食用ガエルの摘出心臓灌流標本を用い,labctalolの単独作用ならびにisoproterenol,epinephrine,norepinephrine,phenylephrine,propranololおよびphentolamineの作用に対するlabetalolの拮抗作用を検討した.さらに,食用ガエル後肢血管とウサギ耳介血管の灌流実験を行ない,末梢血管作用を検討した.これらの実験結果から,labetalolのαおよびβ受容体遮断作用は,灌流液を正常の液にもどした後も暫時持続することが証明された.labetalolの高濃度投与によって血管平滑筋は強い弛緩(または拡張)を起したが,薬物の除去によってこの弛緩作用は直ちに消失した.しかし,アドレナリン受容体遮断作用は洗浄後も持続した。従って,labetalolによる末梢血管の拡張にはα-受容体遮断のみならず,他の機序も加わっている可能性が考えられ,血管平滑筋に対する直接作用の存在が推察される.

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