日本薬理学雑誌
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Atenololの心臓におよぼす作用およびβ-受容体遮断作用の心臓選択性
菅野 盛夫中谷 晴昭服部 裕一泉 尭西村 泰一酒井 兼司安孫子 保
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1980 年 76 巻 7 号 p. 621-632

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抄録

β-遮断薬であるatenololの心臓作用について,刺激伝導および心収縮力におよぼす影響を中心にpropranololと比較検討した.あわせてatenololのβ-受容体遮断効果の心臓選択性および心臓のβ-受容体遮断効果と血漿濃度との関係を検討した.1)摘出モルモット右心房および気管標本のisoproterenolによる拍動数増加および平滑筋弛緩作用に対するpA2比から求めたatenololの心臓選択性は42.7であったのに対しpropranololは0.7であった.麻酔モルモットにおいて,isoproterenol(2.5μg/kg i.v.)による心拍数増加を50%抑制するatenololの用量は2.6mg/kg i.v.でpropranololの6.5倍であり,histamine aerosol吸入による無麻酔モルモットの呼吸困難を予防するisoproterenol(20μg/kg s.c.)の効果を完全に抑制するatenololの用量は,13.8mg/kg s.c.でpropranololの17.3倍であった.したがって,propranololに比較してatenololは2.7倍の心臓選択性を示した.2)麻酔犬においてisoproterenol(0.4μg/kg i.v.)による心拍数増加および心収縮力増加を50%抑制するatenololの血漿濃度は約0.12μg/ml,100%抑制濃度は約4μg/mlであった.3)洞房結節破壊後一定頻度(140拍/分)で心房ペーシングしている麻酔犬のHis束心電図上のAH時間はatenololによって用量依存的に延長し,高用量でAVブロックが生じた.0.3mg/kg i.v.以下の低用量では,延長はpropranololのそれより強い傾向を示した.1mg/kg以上の用量ではpropranololがatenololより強い影響を与えた.房室結節機能的不応期は両薬物によって延長したが,その変化は時間の延長と対応していた.atenololが示す心房筋有効および機能的不応期の延長は,用量に依存していて,propranololによる延長と有意の差を認めなかった.心収縮力はatenololによって用量依存的に抑制されたが,心不全状態は30mg/kgで5例中1例発現したのに対し,propranololでは3mg/kgで5例中2例に発現した.刺激頻度を160および180拍/分にあげると,両薬物によるAH時間の延長は増強された.

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