日本薬理学雑誌
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Suloctidilの脳Hypoxia保護作用
堀 信顯勝田 信夫西 広吉
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1980 年 76 巻 7 号 p. 655-665

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抄録

suloctidil(以下MY103と略)のhypoxia保護作用につき低酸素負荷マウスの生存時間延長作用とモルモット前梨状葉薄切切片標本の低酸素負荷実験により確かめた.1)マウスにおける低酸素下の生存時間に対してMY103は3.0~12.5mg/kg i.p.投与によって用量依存性に有意なhypoxia保護作用を示した.2)モルモットの前梨状葉薄切切片標本を用い,外側嗅索の電気刺激時に応答する誘発電位を皮質表層から記録しながら,脳切片保生液中の酸素濃度を正常時の約45%に減ずると,この誘発電位の振幅は可逆的に減少し,安定な実験の再現性が見られた.3)本実験系を用い,低酸素負荷時の誘発電位の減少度を指標としてMY103のhypoxia保護作用を検討した.4)脳切片を10-7~10-6g/mlのMY103を含む正常Ringer液中に15分間プレインキュベーションすると,その後の低酸素負荷による誘発電位の減少は明らかに抑制され,MY103は明らかな脳hypoxia保護作用を示すことが認められた.5)このようなMY103の低酸素負荷時の誘発電位の減少に及ぼす作用ならびにマウスの生存時間の延長の機序については現在の所不明確であるが,脳細胞への酸素の取り込み,あるいはglucose利用率に及ぼすMY103の作用がその要因をなすものと推定される.

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