日本薬理学雑誌
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Guanfacine(BS100-141)の中枢神経系に対する作用について
飯塚 宏美今井 昭一
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1980 年 76 巻 7 号 p. 667-674

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抄録

中枢性抗高血圧薬といわれているguanfacine(BS100-141)の中枢神経系に対する作用をマウスおよびラットを用いて検索し,clonidineのそれと比較した.マウスではguanfacine4ないし16mg/kg,p.o.で刺激に対する感受性の亢進や自発運動の亢進などの症状が軽度に,また眼球突出や立毛などの症状が比較的著明にみられた.これに対してclonidineは1ないし4mg/kg,p.o.でguanfacineとほぼ同じ症状を惹き起したが,16mg/kg,p.o.では前述の症状の他に咬みつき合いや間代性痙攣などの症状がみられた.マウスのhexobarbital睡眠時間に対してguanfacine 4mg/kg,p.o.は軽度の延長を示し,またclonidineの同用量も延長を示した.また,guanfacine 4mg/kg,p.o.は電撃やpentylenetetrazolによるマウスの痙攣発生をclonidineと同様抑制しなかった.しかし,tail pinchや酢酸液の腹腔内投与のような侵害刺激に対するマウスの反応はguanfacineおよびclonidineの1ないし4mg/kg,p.o.で完全に抑制された.一方,ラットではguanfacine 1ないし16mg/kg,p.o.で接触や音刺激に対する感受性の低下やカタレプシーなどの症状と眼球突出や立毛などの症状がみられた.clonidineではguanfacineと同じ症状がより低い用量でみられた.guanfacine 2mg/kg,i.v.はラットの皮質脳波を高振幅徐波化し,また海馬脳波も脱同期化した.これらの作用持続時間は短かった.ラットの自発運動量はguanfacine 4mg/kg,p.o.,clonidine 1mg/kg,p.o.で減少した.guanfacine 2ないし5mg/kg,p.o.はラットの正常体温を低下せしめたが,その効果はclonidineよりも弱く,また持続も短かった.以上の結果,guanfacineはラットでは中枢抑制作用を示すが,マウスでは侵害刺激に対する抑制反応を除けば中枢抑制作用を示さぬこと,guanfacineの中枢作用はclonidineのそれと類似しているが,作用は総じて弱いことがわかった.

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