日本薬理学雑誌
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D-Penicillamine の研究(第3報) 免疫調節作用の検討
小友 進中池 司郎辻 郁子森 千鶴子大関 正弘
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1981 年 77 巻 3 号 p. 313-320

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抄録

D-penicillamine(D-PA)の免疫機能に及ぼす影響を抗原刺激量を変化させた実験モデルを用いて検討した.Wistar 系ラットを用いたアジュバント関節炎(AA)にたいしては,D-PA の作用時期を明確にするため1回静脈内投与する方法を用いた.その結果通常使用される結核死菌量で誘導した AA にたいしては何ら作用を示さなかったが,結核死菌量を減らし低発症となる条件下で感作と同時に D-PA を注射した場合,D-PA に明らかな発症促進作用が認められた.ヒツジ赤血球(SRBC)を抗原としたマウス PFC 産生能にたいする D-PA の作用については,感作抗原量を種々変化させ,D-PA を感作直後および24時間後の2回腹腔内投与することにより検討した.通常感作量(4×108 SRBC)により感作した場合には D-PA により PFC 産生抑制が認められたが,低感作量(4×106 SRBC)を用いることによって抗原刺激量を少なくした場合,D-PA により2倍前後の PFC 数増加が認められた.また,D-PA の1回投与した場合のマウス PFC 産生に及ぼす影響を検討したところ,感作後2時間に投与した時に最大の促進作用が認められた.concanavalin Aによるマウス脾細胞幼若化にたいしては,D-PA 1×10-6~5×10-5M で25%程度の促進,5×10-4M で抑制作用が認められた,これらの成績より D-PA は levamisole と同様に免疫調節剤としての作用を有することが認められた.その作用機作としては,AA および PFC の成績より,おそらく免疫反応の初期の段階,つまり macrophage による抗原貪食あるいはリンパ球への抗原情報伝達の段階に作用しているものと考えられる.

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