日本薬理学雑誌
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Immune complex型腎炎に関する研究(1)
ラットの慢性血清病腎炎モデルの追試と新しい作成法
永松 正鈴木 良雄
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1981 年 78 巻 5-6 号 p. 491-499

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抄録

蛋白尿と尿中酵素活性の漏出を指標として,異種血清アルブミン投与によるラット慢性血清病腎炎モデルの作り方を追試し,新しい優れた作成法を確立した.始めにFennellらの方法に準じてWistar系ラットに各種血清アルブミン (3mg/rat) をcomplete Freund's adjuvant (CFA) と共に1週おきに3回背部皮下注射して予備免疫とし,その2週後から抗原 (3mg/rat) を週1回つつ静脈注射した.その結果,ウサギ血清アルブミン (RSA) 投与群に静脈注射2週目から軽度ではあるが明らかな腎炎が得られた.しかし70%の死亡率を示した.次にYamamotoらの方法に準じて, Wistar系ラットにウシ血清アルブミン (BSA) の1mg/ratを背部皮下または足蹠皮内に注射して予備免疫し,その8週後からBSA 1mg/ratを連日静脈注射した. BSAを背部皮下に予備免疫後毎日1回4週間静脈注射した群には5週目から著明な腎炎の発症が見られた.しかし50%の死亡率を示した.以上の結果を考慮に入れて著者らは,腎炎がより発症しやすいと言われているSprague Dawley (SD) 系とDonryu系ラットを用いて, RSA 3mg/ratとCFAを背部皮下に注射して予備免疫し,その2週後から1日おきにRSA 1mg/ratを静脈注射する方法を行った.その結果両系ともにRSA静脈注射開始後3週目から蛋自尿が出現し,経日的に強い腎炎の発疲を導いた. 7週目で抗原の静脈注射をやめ,その後の経過を観察したが,その後29週目まで著明な蛋白尿が継続して認められた.この場合の死亡率は0%であった.この新惹起法は予備免疫の期間が短かく,また抗原の1日おきの静脈注射で慢性的な腎炎が得られることから,ラットの慢性血清病腎炎モデルとして価値が大きいと思われる。

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