日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
ラットのタイミング行動に対するPyrithiamineおよびOxythiamine連続投与の影響
橋本 慶吾
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 78 巻 5-6 号 p. 521-528

詳細
抄録

ラットを食餌制限により動機づけ, 2秒間以上レバーを押し続けた時のみ餌を与える“2秒response durationスケジュ一ル”によリタイミング行勲を学習させた.次にこの様にしてレパーを放すタイミングの時間弁別を行う様になったラットに, pyrithiamhle (チアミン拮抗物質)を連続投与した時に起る行動の変化を検試した. 1) 対照実験でのレパー押し反応持続時間は,十分に安定した行動基線が得られた.また反応持続時間の分布を示すヒストグラムも平均値の時間帯をピークとする正規分布を示した. 2) pyrithiamine 2mg/kgを連日腹腔内に投与すると,反応持続時間 (2.06±0.03秒) は次第に延長し14日目には2.22±0.03秒となった. pyrithiamine投与を中止すると,反応持続時間は徐々に旧値に復した. 3) pyrithiamine 4mg/kg連日投与では,反応持続時間は投与2日目から延長し,またヒストグラムは正規性を失い右方(長時間)に膨れた平坦な型に変化した. 4) 脳内への移行の悪いチアミン拮抗物質oxythiamine 4mg/kg投与では,反応持続時間は投与2日目から有意に短縮した. 5) この実験で用いた条件では, pyrithiamineおよびoxythiamine投与によりラットの体重や一般症状の著しい変化は認められなかった.以上の成績はラットに内的時間感覚の存在することを強く支持するものであり,またpyrithiamine投与により脳内チアミン欠乏が起り時間弁別行動に障害をおこすことが示唆された.

著者関連情報
© 社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top