日本薬理学雑誌
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Hydrocortisone 17-butyrate 21-propionateの薬理学的研究
小友 進樋口 昭平中池 司郎竹下 紀美代田中 誠後藤 佳也長田 祐子土田 勝晴井上 健次京極 和旭樽本 保男笹島 道忠大関 正弘
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1981 年 78 巻 5-6 号 p. 647-658

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抄録

hydrocortisone 17-butyrate 21-propionate (HBP) の抗炎症作用を全身投与ならびに局所投与で検討した. HBPの皮下投与によるラットcarrageenin足浮腫抑制作用は, fluocinolone acetonide, fludroxycortideおよびbetamethasone 17-valerate (BV) などのハロゲン化steroidよりもかなり弱く, hydrocortisone 17-butyrate (HB) とほぼ同程度であった.また,同じく皮下投与によるラットdinitrochlorobenzene (DNCB) 皮膚炎,ラットcotton pellet肉芽腫, adjuvant関節炎およびマウス遅延型アレルギー性足浮腫に対する抑制作用ならびに胸腺退縮作用,肝glycogen蓄積作用および脳下垂体・副賢皮質機能に対する作用もBVより弱く, HBとほぼ同程度であった.一方,軟膏として皮膚に適用したときのラットcroton oil皮膚炎とcroton oil耳介浮腫ならびに局所投与によるcarrageenin足浮腫, cotton pellet肉芽腫に対する抑制作用は, BVやHBよりも強く,そのときの胸線退縮作用はBVよりも弱く, HBと同程度であった.すなわち,全身投与によるHBPの薬効は, BVなどのハロゲン化steroidよりも弱く, HBと同程度であったが,局所投与による薬効は, BVやHBよりも強かった.また,炎症細胞である多形核白血球に対するin vitroでの親和性はHBPが最も高く, 次いでBV, HBの順であった.一方,非炎症細胞である赤血球に対する親和性は, 3薬物間で大きな差異は認められなかったが, HBPとBVに同等の親和性が認められ, HBはこれらよりも親和性が弱かった. HBPのin vitroでの低張圧溶血抑制作用は, BVと同等かやや弱く, HBよりも強かった.以上のことから, HBPは,適用局所における薬効に優れ,しかも全身的影響の少ない薬物であると判断される.

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