日本薬理学雑誌
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薬物の胎仔毒性に関する薬理学的研究(I) アスピリンの胎仔毒性と組織内濃度の関係,並びにそれらにおよぼす発熱物質の影響について
伊丹 孝文加納 晴三郎
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1982 年 79 巻 5 号 p. 357-367

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抄録

aspirin(acetylsalicylic acid,ASA)の毒性,殊に胎仔毒性の発現機構とそれにおよぼすPyrogen(lipopolysaccharide,LPS)の相互作用について検討し以下の成績を得た.1)ASAのsodium塩(Na-ASA)をラットに腹腔内注射した時,LD50は1450mg/kgであったが,100μg/kgのLPS(LD50;4900μg/kg,i.v.)を2時間前に静注したラットでは410mg/kgとなり,ASAの致死毒性の増強が認められた.2)妊娠ラット(妊娠15日)にASA 125,250および500mg/kgを投与すると,500mg/kg投与群で母体重の増加が抑制された.20μg/kgのLPSを前投与した時にはASA 250mg/kg投与群でも強く抑制された.3)上記の各群について妊娠20日に開腹し胎仔を観察したところ,LPSを負荷した群ではASAの投与量に対応した胎仔毒性の発現が認められた.特にLPSを前投与しASAを500mg/kg投与した群では吸収胚および死亡胎仔,生存胎仔の子宮内発育の遅延および骨格の異常(波状肋骨・胸骨核の不相称)が高率でみられた.しかしLPSを負荷しない群ではいずれも認むべき胎仔毒性は観察されなかった.4)ASAを投与した後の血漿中ASA濃度は低く,かつ速やかに消失した.LPSを負荷した場合でも同様であった.しかし代謝産物であるsalicylic acid(SA)の濃度はLPSを前投与した時,著しく高く,消失速度は緩やかであった.5)ASAを投与した後の母体臓器および胎仔への分布は母体脳,胎仔,胎盤,肝,腎および子宮の順に低かった.LPSを前投与した群では,いずれの臓器でも増加したが,特に胎盤および胎仔での増加が顕著であった.6)妊娠ラットにLPS(20μg/kg)を投与し,母体肝,胎盤,子宮および胎仔肝についてATPレベルを測定したところ,いずれの臓器についても,対照群に比べ軽度の低下が認められた.しかしASA(500mg/kg)の投与では母体肝にのみ弱い低下がみられただけであった.LPSを負荷しASAを投与した群では母体肝および胎仔肝に著しい低下が認められた.

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