日本薬理学雑誌
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消化管の上皮粘膜分泌細胞動態に関する研究(第1報)―マウス胃粘膜の増殖帯の細胞動態に対する種々薬物の影響―
村上 学佐々木 善二三崎 文夫川井 啓市若林 庸夫
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1982 年 79 巻 6 号 p. 591-597

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抄録

種々の抗潰瘍剤および2,3のホルモンのマウス胃粘膜増殖帯細胞に対する影響を,3H-thymidineを用い,オートラジオグラフィで検討した.薬物を1日1回あるいは2回,7日間に亘り投与し,その後flash labeling法で3H-thymidine取り込み細胞を観察し,増殖帯における細胞標識率を求めた.抗潰瘍作用を有するcimetidine(100mg/kg,p.o.),geranylgeranylacetone(GGA,100mg/kg,p.o.),Cu-chlorophyllin-Na(300mg/kg,p.o.)はいずれも胃底腺および幽門腺領域における標識率には影響しなかったが,carbenoxolone(100mg/kg,p.o.)は幽門腺領域における標識率を低下させた.一方,消化管ホルモンであるsecretinは標識率に影響を示さなかったが,tetragastrin(1mg/kg,i.m.)は胃底腺領域における標識率を増加させた.hydrocortisone(100mg/kg,s.c.)は胃底腺領域において標識率の低下を示した.この標識率の低下はGGAを併用することにより抑制された.以上の結果から,正常マウス胃粘膜増殖帯の細胞標識率は今回用いた抗潰瘍剤では,carbenoxoloneを除き,影響されず,tetragastrinおよびhydrocortisoneによって特に胃底腺領域において影響を受けること,また,GGAが潰瘍惹起作用を有するhydrocortisoneによる胃底腺領域の標識率の低下を抑制したことはGGAがhydrocortisoneによる粘膜細胞回転に対する作用を制御した可能性が考えられ,胃潰瘍の病因に粘膜細胞動態が関与することが示唆された.

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