日本薬理学雑誌
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TN-762(Suprofen)の血小板凝集抑制作用
今井 浩達村松 弥生丹生 一三野崎 正勝藤村 一
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1982 年 80 巻 1 号 p. 61-68

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抄録

非ステロイド系抗炎症薬であるsuprofenの血小板凝集に対する作用をketoprofen,indomethacinと比較検討した.in vitro血小板凝集試験には,ウサギおよびラットの多血小板血漿(PRP)を用い,collagenまたはarachidonic acid(AA)によって凝集を惹起した.suprofenは,この血小板凝集に対し,比較薬よりも有意に強力な抑制作用を示し,特にウサギ血小板のAA凝集においては,そのIC50が0.01μMと非常に微量で有効であった.ex vivoラット血小板凝集試験においても,suprofenはketoprofen,indomethacinと比較して,同等あるいはより強力な作用を示した.またin vivo,AAウサギ急性致死阻止試験においてもsuprofenの最小有効量は0.05mg/kgとなり,これはketoprofenと同等で,indomethacinの1/4であった.ラット大動脈片からのPGI2産生に対して,被験薬はすべて同程度の弱い阻害作用を示したがラットPRPのAA凝集に対してはsuprofenが最も低用量で抑制した.ラットのゲル濾過血小板のADPあるいはcollagen凝集に対して,被験薬はすべて有意な抑制作用を示したが,被験薬間の薬効に有意差は認められなかった.さらに,薬物と膜脂質との相互作用を検討するために,血小板膜モデルとして血小板膜類似の脂質組成を有するリボゾームを調製してそのCa2+による凝集に対する被検薬の作用を試験した.被検薬はこのリボゾーム凝集を抑制し,その強度はindomethacin,suprofen,ketoprofenの順となったが,その差はわずかであった.以上の結果より,suprofenはketoprofen,indomethacinと同等またはそれ以上の強い血小板凝集抑制作用を示し,抗血栓症薬としての臨床応用の可能性が示された.

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