日本薬理学雑誌
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無麻酔犬の消化管運動に対するTrimebutine maleateの作用
竹永 秀幸曲渕 徹雄野坂 邦雄玉木 元
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1982 年 80 巻 4 号 p. 271-278

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抄録

trimebutine maleateは,消化器系疾患治療に有用な薬物であることが知られている.本実験では,あらかじめフォーストランスジューサーを装着した無麻酔犬を用い,消化管運動に対するtrimebutine maleateの作用を,静脈内投与により調べ,metoclopramideおよびhyoscine-N-butylbromideの作用と比較,検討した.空腹期の運動静止時にtrimebutine maleateを投与すると,消化管各部位に暫時持続する収縮運動が発生し,あるいは,静止期が短縮した.一方,食後期の運動発現時にtrimebutine maleateを投与すると,胃前庭部および十二指腸の運動は抑制されたが,空腸,回腸および結腸の運動は亢進した.metoclopramideでは,空腹期静止時に主として上部消化管に持続的な運動を発生させたが,食後期の収縮運動に対しては胃前庭部に弱い運動亢進作用を認めたのみで,小腸,結腸にはほとんど作用を示さなかった.hyoscine-N-butylbromideは,空腹期の運動静止時に投与しても作用を示さず,食後期においては消化管各部位の運動を抑制した.以上のように,無麻酔犬の消化管運動に対するtrimebutine maleateの作用様式は,metoclopramideやhyoscine-N-butylbromideとは異なっており,亢進,抑制の二面的作用を有することが示された.

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