日本薬理学雑誌
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薬物の胎仔毒性に関する薬理学的研究
(III)硝酸カリウムのラットの二世代に及ぼす影響について
江馬 真加納 晴三郎
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1983 年 81 巻 6 号 p. 469-480

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抄録

食品添加物として使用されている硝酸カリウム(KNO3)の次世代に及ぼす影響についてWistarラットを用いて検討した.妊娠ラット(F0)の妊娠7から14日まで2.5,0.5または0.1%のKNO3を含む飼料を与え,妊娠末期胎仔および自然分娩させて得た仔(F1)に対する影響,さらに,生後13週に達した同一群の雌雄を交配させ,F1の妊娠7から14日まで,それぞれの母親(F0)に投与したと同濃度のKNO3を含む飼料を与え,F1の仔(F2)についてF1と同様に検査し,次の結果が得られた.1)妊娠母体(F0)に対するKNO3投与による影響はみられず,生存胎仔(F1)の数および体重にもKNO3投与群と対照群との間に差は認められなかった.2)いずれの群にも外表奇形胎仔は観察されなかった.骨格および内臓検査でも著明な影響は認められなかった.3)生後13週までのF1の成長においてもKNO3投与による影響はみられず,F1の生殖能力も各群とも良好であった.4)生存胎仔(F2)の数および体重,また,骨格および内臓検査においてKNO3投与による著明な影響は認められなかった.5)F0およびF1の妊娠中に2.5%のKNO3を投与した群に生存胎仔133例中6例,自然分娩仔63例中7例に外表奇形が観察された.主な奇形の型は外脳,口唇・口蓋裂,多指,小眼あるいは無眼などであった.他の群には外表奇形は観察されなかった.6)自然分娩仔(F2)の生存率には各投与群と対照群との間に差はなかったが,各投与群の雄の成長が遅れる傾向が認められた.以上の結果より,KNO3を二世代にわたって妊娠ラットに与えたとき,F1に対する毒性は認められなかったが,F2において毒性が発現することが明らかとなった.

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