日本薬理学雑誌
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新しい睡眠導入剤1H-1,2,4-Triazolyl benzophenone誘導体450191-Sの薬理(I) 行動薬理学的研究
山本 研一広瀬 勝巳松下 享吉村 弘二沢田 亨永業 正美城山 博邦藤田 明広松原 旦明月野木 祐二畠山 久男塩見 輝雄伊比井 信広井上 譲広野 悟越田 光
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1984 年 84 巻 1 号 p. 109-154

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抄録

マウス,ラット,ネコおよびアカゲザルを用いてlH-1,2,4-triazolyl benzophenone誘導体450191-Sおよびその代謝物の作用を行動薬理学的に解析し,diazepam,nitrazepam,cstazolam,triazolamその他のbenzodiazepines(BDZ)と比較を行った。マウス,ラットの行動は450191-Sの経口投与後鎮静的で発揚症状は現われず,マウスのAnimexおよびラットのオープンフィールド試験における自発運動にも著変を来たさなかったが,rearing,preeningを対照薬と同様に抑制した.450191-Sのchlorprothixene睡眠およびthiopental-Na 麻酔増強作用はnitrazepamと同程度,diazepam,estazolamより2~6倍強かった.450191-Sのpentylenetetrazol,picrotoxin,bicucullineけいれん抑制作用はnitrazepamと同程度であったが,抗電撃けいれん作用はいずれの対照薬よりも弱かった.450191-Sのネコ,サルの威嚇行動抑制作用は対照薬と同程度,マウスの抗闘争作用はtriazolam以外の対照薬より強く,嗅球摘出ラットのmuricideおよび情動過多反応の抑制はdiazepamとほぼ同程度であった.450191-Sの抗confiict作用はestazolam以外の対照薬とほぼ同じで,Sidman回避反応,低率分化餌強化,脳内自己刺激などのオペラント行動に対してはdiazepamと同程度の作用を示した.450191-Sは2週間の連続投与によっても麻酔増強作用ないし抗pcntylenetetrazolけいれん作用に耐性を発現しなかった.450191-Sの筋弛緩を含む体性機能の異常はどの対照薬よりも著しく弱かった.マウスの懸垂,回転棒,傾斜板試験による450191-Sの協調運動抑制作用は対照薬の1/2~1/266で著しく弱く,ネコとサルの歩行失調および麻酔ネコの呼吸運動抑制作用も対照薬より明らかに弱かった。450191-Sの血漿中代謝物M-1,M-2,M-A,M-3は母化合物450191-Sとほぼ同程度の麻酔増強作用と抗不安作用を示したが,筋弛緩や運動障害作用は母化合物より著しく強かった.以上,450191-Sは催眠作用を含む中枢神経抑制作用を有する反面,筋弛緩作用および運動失調などの副作用はきわめて弱いので安全性の高い化合物と推定された.

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