日本薬理学雑誌
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14C-Glucosamineの胃粘膜および肝組織への取込みとその消退に対する3,4,5-Trimethoxy-N-(3-piperidyl)benzamide(KU-54)の影響
阿部 泰夫関口 治男都留 清志入倉 勉
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1984 年 84 巻 1 号 p. 11-18

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抄録

14C-glucosamine(9.88μCi/animal)を種々の条件下のラットに腹腔内投与し,胃粘膜,肝臓中酸不溶性または酸可溶性分画に取込まれる放射活性に対するKU-54の影響を検討した.ラット胃粘膜の酸不溶性分画に取込まれた放射活性は投与後,次第に上昇し,5~7時間でほぼプラトーに達し長時間組織中に滞留した.一方,酸可溶性分画の放射活性は投与1時間後にピークを示し,その後,急速に減少しすみやかに組織から排出された.また,酸可溶性分画に対する酸不溶性分画の放射活性の比率は胃粘膜では肝臓のそれより著しく大きく,酸不溶性分画への14C-glucosamineの取込みが胃では行われやすいことを示した.これらに対するKU-54の影響を検討するため,ラットにKU-54 100mg/kgを1日2回,5日間連日経口投与した(ただし,5日目は1回投与).胃粘膜の酸不溶性分画に取込まれる放射活性は有意に増加した.肝臓の放射活性は影響をうけなかった.また,hydrocortisone 20mg/kg皮下投与したラットでは胃粘膜の酸不溶性分画の放射活性が正常状態より低下したが,KU-54 100mg/kg1日2回,5日間連日併用投与した場合(ただし,5日目は1回投与),放射活性の低下が有意に阻止された.しかし,肝臓では低下が阻止されなかった,このようにKU-54は胃粘膜で特有な影響を示すと考えられた.酢酸潰瘍を形成して5日目のラットでは潰瘍辺縁粘膜の酸不溶性分画の放射活性が正常胃粘膜のそれより有意に増加した.しかし,この増加はKU-54投与によって影響をうけなかった.一方,潰瘍形成10日目では潰瘍辺縁部の放射活性は正常レベルと差がなかった.しかし,KU-54 100mg/kgの連続投与によって放射活性は正常胃粘膜のそれより有意に増加した.また,ラット胃粘膜に取込まれた放射活性は24時間,48時間後では次第に減少したがその減少率はKU-54 100mg/kg投与によって酸不溶性,酸可溶性いずれの分画でも影響されなかった.

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