日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
マウスにおける薬物混入飼料法を用いたMorphine型薬物の身体依存
鈴木 勉吉井 利郎柳浦 才三
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 84 巻 1 号 p. 19-24

詳細
抄録

マウスにおける薬物混入飼料法を用いたmorphine型薬物の身体依存性について検討した.実験にはICR系マウスを用い,morphine,codeineおよびpethidineを適用した.各薬物とも粉末飼料に1,2,3mg/g fbodの濃度に混入し,それぞれ3日間ずつ9日間適用した,薬物適用後,各群にnaloxone 5mg/kgを皮下投与した結果,morphine群およびcodeine群では著明な退薬症候が観察されたが,pethidine群では観察されなかった,これに対し,pethidine混入飼料1,2,3,4,6mg/g foodをそれぞれ4,4,4,4,12日間ずつ28日間適用した群では,naloxone投与後,退薬症候がみられた.したがって,薬物混入飼料法を用いることにより,morphineおよびcodeincの身体依存を容易に形成することができ,さらに適用条件を考慮することにより,身体依存能の弱いとされているpethidineの身体依存の形成も可能なことが示唆された.一方,morphine混入飼料を9日間適用したマウスに休薬後,morphineの皮下投与を行うと,5mg/kg以上の投与により退薬症候が完全に消失した.すなわち,このmorphine依存マウスでの,皮下注射によるmorphine依存維持量は5mg/kgであった.また,codeineを交叉皮下投与した場合は,40mg/kgの投与で最も強い退薬症候の抑制がみられた.これに対し,pethidineを交叉投与した群では,100mg/kgを投与しても不完全な退薬症候の抑制しか観察されなかった.つまり,交叉試験の結果からも,マウスにおけるpethidineの身体依存能は弱いものと考えられる.以上より,薬物混入飼料法を用いることによって,morphine型薬物の交叉身体依存性試験も容易に行えることが示された,したがって,マウスにおいても薬物混入飼料法を用いて,morphine型薬物の身体依存の有無および強弱の一次的な評価が可能であることが示唆された.

著者関連情報
© 社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top