日本薬理学雑誌
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椎骨および総頸動脈閉塞による脳虚血モデルラットの神経化学的検討
武 陽明成実 重彦永井 康雄栗原 悦雄佐治 美昭名川 雄児
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1984 年 84 巻 6 号 p. 485-498

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抄録

両側椎骨動脈を電気焼灼したラットを用いて,その翌日総頸動脈を一時的に閉塞することにより脳虚血モデルを作製した.この脳虚血ラットにおいて脳内神経化学的パラメータの変化を検討することにより脳虚血モデルとしての特徴づけを試みた.10分間脳虚血群では,血流再開直前および再開後ともに測定した4部位(大脳皮質,線条体,側坐核+嗅結節,視床下部)のモノアミン含量は有意な変化を示さなかった.γ-aminobutyric acid(GABA)含量は,再開直前に測定した全部位(モノアミン含量測定部位に,海馬,視床,橋+延髄,小脳を加えた8部位)のうち側坐核+嗅結節および橋+延髄を除いた部位で有意に増加したが,5分後には大脳皮質を除き,ほぼ回復した.cyclic AMP(cAMP)含量は,再開1分後に測定した5部位(GABA含量測定部位から視床下部,橋+延髄,小脳を除いた部位)で4~8倍に増加したが,3~5分後には回復した.また,大脳皮質において再開直前に,choline acetyltransferase(CAT)およびacetylcholine esterase(AChE)活性も有意に抑制されたが,再開15分後には,ほぼ回復した.30分間脳虚血群では,モノアミン含量は再開直前に,ほぼ全部位(8部位)で減少し,5-hydroxytryptamine(5-HT)が最も著明であった.再開30分後までにdopamine(DA)含量は側坐核+嗅結節を除いた部位でほぼ回復したが,5-HTおよびnorepinephrine(NE)含量は,大脳皮質海馬,側坐核+嗅結節および視床で回復しなかった.血流再開直前に,ほぼ全部位で有意に増加したGABA含量のうち,大脳皮質および小脳のGABA含量は再開30分後でも回復しなかった.再開10分後に全部位で有意に増加したcAMP含量は,20分後にはほぼ回復したものの,大脳皮質,線条体,側坐核+嗅結節および視床下部では30分後に有意に減少した.以上,種々な神経化学的パラメータの変化から虚血処置の脳内神経活動に及ぼす影響は,10分間脳虚血群では一過性であったが,30分間脳虚血群では持続的であり,特に終脳部では著明であることがわかった.

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