日本薬理学雑誌
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非ステロイド性抗炎症薬のAcetylcholine writhingに対する作用
天沼 二三雄若海 智恵子田中 誠村松 信相原 弘和
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1984 年 84 巻 6 号 p. 543-551

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抄録

acetylcholine(ACh)writhing法の鎮痛試験法としての有用性を検討するため,マウスを用いて基礎条件の検討,ならびに非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の鎮痛作用を,acetic acid writhing法およびphenylquinone writhing法に対する作用と比較検討した.また,酸性NSAIDsのprostaglandins(PGs)生合成阻害作用(in vitro)も検討した.基礎条件 : AChを腹腔内に投与すると5,10mg/kgで全例にwrithingが認められたが,そのwrithing数はほぼ同じであった.また,ACh投与直後から10分間のwrithing数は平均2.8回で,投与9分以後にはwrithingは認められなかった.従って,NSAIDsの鎮痛作用を評価する場合は,ACh 5mg/kgを腹腔内に投与して,直後より10分間のwrithing数を測定し,writhingの全く発現しない場合を鎮痛作用陽性とみなすことにした.NSAIDsの鎮痛作用 : 使用したNSAIDsは各種writhing法で抑制作用を示したが,ACh writhing法のED50値と他のwrithing法のED50値を比較すると,sodium salicylate以外の酸性NSAIDsはACh writhing法のED50値が最も低値であった.各種writhing法のED50値とPGs生合成阻害作用のIC50値との間には,有意な正の相関々係が認められ,さらにPGs生合成阻害作用の評価法(in vivo)として報告されている“ひまし油下痢”に対するED50値との間にも有意な正の相関々係が認められたが,ACh writhing法のED50値との相関が最も強かった(r=0.93,P<0.01).同様に,酸性NSAIDsの場合,各種writhing法のED50値と臨床用量との間にも有意な正の相関々係が認められたが,ACh writhing法のED50値との相関が最も強かった(r=0.90,P<0.001)。以上の結果よりACh writhing法はPGsの関与する試験法で,酸性NSAIDsの効力評価に適した方法と考えられる.

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