日本薬理学雑誌
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Tritoqualine(TRQ)のラット四塩化炭素慢性肝障害に対する治療的効果
湯浅 聡須藤 敦子土志田 和夫武知 雅人梅津 浩平
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1985 年 85 巻 4 号 p. 249-257

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抄録

四塩化炭素(CCl4)をラットに12週間連続投与して(0.5 ml/kg,s.c.,2回/週)慢性肝障害を誘発させた.CCl4投与開始後21日目よりtritoqualine(TRQ)投与を開始しTRQの治療効果を調べた.CCl4処置コントロール群の体重は無処置群と比べると著しく増加が抑制されたが,TRQ投与群は投与開始後4週目より投与量依存的に体重増加を回復した.12週目のCCl4コントロール群の肝臓にはhydroxyprolineとヒスタミンの増加が著明に観察され,この両指漂に相互に関連性のあることが推察されたが,TRQ投与群は用量依存的に有意に両指標の増加を抑制した.また病理学的観察により,膠原線維の増生抑制や偽小葉形成の抑制がTRq投与群に確認され,TRQに強い線維形成の抑制作用のあることが示唆された.肝機能の1つとしてのタンパク合成能を調べたところ,TRQ投与群には肝臓および血液の指標の改善が認められ,肝機能の回復が確認された.肝細胞膜障害の指標として測定した血清glutamic oxaloacetic transaminase値はTRQ投与により有意に漏出が抑制された.以上の結果よりTRQは薬理作用として膠原線維の形成抑制,タンパク合成能の亢進,および肝細胞の損傷の抑制作用等を有していて,CCl4慢性肝障害に対して強い治療効果を示したと推察された.

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