日本薬理学雑誌
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モルヒネ耐性ならびに依存の初期形成過程に及ぼす延髄巨大細胞網様核破壊の影響
岸岡 史郎井口 賀之尾崎 昌宣山本 博之
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1985 年 85 巻 6 号 p. 467-480

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抄録

延髄巨大細胞網様核(NRGC)破壊ラットにおけるmorphine(Mor)耐性および依存形成を,初期形成過程を含めて詳細に検討し,Mor耐性および依存形成におけるNRGC関与の有無について明らかにした.両側のNRGCを,DC,0.5 mA,40秒間通電によって破壊した.耐性形成はtail flick法による鎮痛作用を,依存形成はnaloxone(NLX)誘発禁断による一般行動,体重,副腎重量および血漿corticosterone(Pcs)値の変化を指標として検討した.NRGCdestructedrat(破壊群)のMor鎮痛(4~10 mg/kg)およびsham operated rat(対照群)のそれ(2~5 mg/kg)の用量作用曲線には直線性が認められ,両者は平行であった.破壊群と対照群の等鎮痛用量比は1.95であり,NRGC破壊によりMor鎮痛は約50%減弱した.1,3,4および8日間のMor連投により,対照群の用量作用曲線は右方に平行移動し,Mor連投各時期における等鎮痛用量は,Mor連投前のそれのそれぞれ2.0,2.7,3.8および21.8倍であり,経時的な耐性形成過程が明らかであった.破壊群でも耐性が形成され,Mor連投各時期における破壊群と対照群の等鎮痛用量比は,ほぼ一定値を示し,破壊群の耐性形成は,経時的にも,その強さにおいても,対照群のそれと同程度であった.1,2,3,5および6日間のMor連投後,N正X投与によって,NLX投与量およびMor連投期間に依存傾向のある体重減少とPcs値の上昇が認められ,経時的な依存形成過程が明らかであった.また,NLXによって,NLX投与量とMor連投期間には依存しないが,明らかな一般行動変化が惹起された.この様な禁断症状は,対照,破壊両群において同様に認められ,両群のそれらに有意差は認められなかった.Mor耐性および依存形成は,経時的にも,その強さにおいても,NRGC破壊によって何の影響も受けなかった.今回の成績から,Mor鎮痛の発現と耐性および依存形成は,異なった機序によるものであることが示唆された.

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