日本薬理学雑誌
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4-(o-Benzylphenoxy)-N-methylbutylamine hydrochloride(MCI-2016, Bifemelane hydrochloride)の種々条件下の自発運動活性に及ぼす影響について
戸部 昭広江川 三生斉藤 健一橋本 紀子
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1985 年 86 巻 1 号 p. 51-60

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抄録

MCI-2016(bifemelane hydrochloride)の自発運動活性に対する影響を種々の条件下(正常条件,低酸素負荷,頭部外傷負荷)で検討し,methamphetamineならびにCa-hopantenateと比較した.正常条件下にMCI-2016を単回投与した場合(12.5~50 mg/kg, p.o., 3~12 mg/kg, i.p.),12 mg/kg, i.p. 投与例で有意なSMA亢進が観察された.一方,同一条件下にMCI-2016を12.5~50mg/kg, p.o. 連投すると(9~10日間)用量依存的なSMA亢進が観察された.この時,MCI-2016 50 mg/kg, p.o. 投与例でのSMA亢進は馴化期でより顕著に認められた.低酸素負荷(5% O2)によるラットSMA低下に対しても,MCI-2016は50~100 mg/kg, p.o. の5日間連投により有意な改善効果を発現し,その効果はCa-hopantenateに優った.更に頭部外傷負荷後のマウスの自発性低下状態に対してもMCI-2016は50~400 mg/kg, p.o.で有意な拮抗作用を発現した.対照のCa-hopantenate 100~400mg/kg, p.o. では有意な効果は認められなかった.MCI-2016のSMA亢進機序を予測する為methamphetamineを対照として各種受容体作用薬との相互作用を急性投与下に検討した.その結果,MCI-2016のSMA亢進作用がhaloperidolよりもphenoxybenzamineでより強く抑制されること,更に本剤はatropineあるいはscopolamineに対し拮抗的に働くことが判明した.このことは,MCI-2016がmethamphetamineとは質的に異なる作用を有し,noradrenergicあるいはcholinergic mechanismをそれぞれ独立的,あるいは相互作用下に賦活させる可能性が推測された.低酸素負荷ならびに頭部外傷負荷時に於けるcholinergic mechanismの機能低下に関する報告を併わせ考えると,本剤は上記のメカニズムを介して種々条件のSMA低下を改善させるものと予測される.

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