日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
毒性評価のためのマウス受精卵のIn vitro培養(3)受精卵の発育に対する発癌物質の影響
鎌田 紘八等々力 英美楠本 昌子古見 耕一大石 幸子赤松 隆
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 87 巻 4 号 p. 479-485

詳細
抄録

薬物の毒性評価,特に発癌性の評価の短期試験法を開発することを目的としてマウスの受精卵の培養を行った.受精卵を2細胞期または8細胞期に採取し,それぞれの卵を1-104pM 4-nitroquinoline-l-oxide(4-NQO)と1-104nM N-methyl-nitro-nitrosoguanidine(MNNG)に24時間,曝露しさらに胚盤胞期まで清浄な培養液内で発育させた.4NQOの曝露後,2細胞卵の発育率は曝露期間中および曝露後共にほぼ正常な発育率を示したが,死亡率は濃度依存的に増加する傾向を示した.また,8細胞卵の発育率は曝露後,初期胚盤胞および胚盤胞が濃度依存的に増加し,発育遅延の傾向を示した.2細胞卵由来の胚盤胞(2胚)の染色分体交換頻度(SCE)や分裂指数は濃度依存的な増加を示した.8細胞卵由来の胚盤胞(8胚)ではSCEや分裂指数の増加を認めなかった.MNNGへの曝露期間中,2細胞卵の発育は104nM群で停止し,他の曝露群では8細胞卵への発育率が若干減少する傾向を示した.しかし培養開始後48時間では1~100 nM群で発育促進の傾向がみられた.死亡卵は1 μM以上で発現し,経時的にも増加した.曝露後は10~100 nM群で濃度依存的な増加を示し,分裂指数も1~100 nM群で高率を示した.しかし,SCEは増加しなかった.8胚では,細胞数および分裂指数は殆ど変化しなかったが,SCEは濃度依存的に著しく増加した.したがって,受精卵の培養法を用いた評価法はSCEの誘発が可能なことから変異原性試験として,また分裂指数の増加に伴なう細胞数の増加は細胞増殖能の促進とみなされることから癌原性試験としても有効な手段になり得るものと考えられる.

著者関連情報
© 社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top