日本薬理学雑誌
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新しい睡眠導入剤 1H-1,2,4-Triazolyl benzophenone 誘導体 450191-S の脳波学的研究
渡辺 繁紀太田 尚桜井 康子高尾 勝幸植木 昭和
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1986 年 88 巻 1 号 p. 19-32

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抄録

慢性電極植込みウサギを用いて,行動を観察しながら脳波および大脳辺縁系後発射に対する 450191-S ならびにその代謝産物の作用を調べ,nitrazepam および estazolam と比較した.450191-S は 0.1~0.5 mg/kg,i.v.投与でウサギは鎮静状態となり,これに伴って脳波は全般的に傾眠パターンとなった.すなわち皮質,扁桃体では高電圧徐波,海馬ではθ波の同期がくずれて不規則なパターンとなった.この場合,皮質では高電圧徐波に速波成分(β波)が重畳するのが特徴的であった.脳波のパワースペクトルでも皮質では低周波のパワーの著明な増大がみられ,また15 Hz 前後のパワーも軽度に増加した.これらの作用は nitrazepam および estazolam でも同様で,450191-S の作用強度は estazolam とほぼ同程度であったが,nitrazepam よりも強かった.作用の持続は 450191-S が一番長い.音刺激,中脳網様体,後部視床下部および視床内側中心核の電気刺激による脳波覚醒反応はいずれも 450191-S により著明に抑制された.閃光刺激により後頭葉皮質に誘発される電位は 450191-S により著明に抑制された.漸増反応は 450191-S によりほとんど影響されなかった.海馬および扁桃体刺激による後発射は 450191-S によって著明に抑制された.これらの作用は nitrazepam および estazolam でも同様であったが,450191-S の作用は estazolam とほぼ同程度で,nitrazepam よりも強かった.450191-S の代謝産物は質的には母物質と全く同様の脳波作用を示し,また M-1 および M-2 は母物質とほぼ同程度の作用強度および持続であったが,M-A の作用は母物質よりも弱くまた持続も短かった.

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