日本薬理学雑誌
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ペプチド性オピオイド並びにモルヒネ関連化合物の末梢性鎮痛作用について
柴田 学大久保 つや子高橋 宏工藤 照夫猪木 令三
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1986 年 88 巻 2 号 p. 101-107

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抄録

モルヒネ誘導体及びペプチド性オピオイドの末梢における鎮痛効果を検討する目的で,morphine,ethylketocyclazocine(EKC),dynorphin,[D-Ala2,Met5]-enkephalinamide,[Met5]-enkephalinについて,われわれが考案したformalinによる足蹠疼痛モデル(性質の異なる第1相,第2相の2つの疼痛が得られるのが特徴)を用いて,被検薬10-9~10-6の微量を炎症局所に投与して,疼痛抑制効果を検討した.その結果オピオイドペプチドでは20~500pmolの用量でdynorphin>[D-Ala2,Met5]-enkephaHnamide>[Met5]-enkephalinの順で用量に依存した抑制効果を認めた.これに対しEKC,morphineでは0.4~2.2nmolの用量で,疼痛モデル第1相は用量依存的に抑制するものの,疼痛第2相では却って過敏が用量に依存して出現した.これらの疼痛抑制はlidocaine hydrochlorideが示す抑制用量の約1/10,000~1/500用量であり,局所麻酔作用とは異なった機序によるものと考えられた,また,これらの拮抗を見るためにnaloxoneと,末梢側にのみ作用を示すN-methyl levallorphanを用いて,作用消失の有無を検討した.その結果第1相疼痛においては,被検薬すべての疼痛抑制は,両拮抗薬によって有意に拮抗されたが,第2相ではN-methyl levallorphanのみに拮抗が認められた.またEKC,morphineによる疼痛過敏もN-methyl levallorphanで有意に拮抗された.以上の事実より末梢においても,オピオイドによる疼痛制御機構が存在し,そのなかにはnaloxoneによって拮抗されず,N-methyl levallorphanによってのみ拮抗される,中枢と異なった受容器の存在が考えられた.またEKC,morphineによって,むしろ疼痛過敏が生ずる機構の存在も示唆された.

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