日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
イデベノン(CV-2619)の脳内分布および脳内グルコース利用率に及ぼす影響
永井 康雄吉田 清志成実 重彦棚山 薫晴永岡 明伸
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 88 巻 2 号 p. 109-123

詳細
抄録

新規ベンゾキノン系化合物で脳血管障害治療効果を有するイデベノン(CV-2619)の脳内作用部位を明らかにする目的で[14C]CV-2619投与後の脳内分布および脳内グルコース利用率をウィスター系ラット(WKY)および脳卒中易発症系高血圧自然発症ラット(SHRSP)を用いて検討した.[14C]CV-2619は2.5および10mg/kg静脈内投与により用量依存性に脳内へ移行し,投与5分後で投与量の0.45~0.56%が脳内へ移行した.[14C]濃度の脳内部位の差はほとんど認められなかったが,全脳オートラジオグラムでは脳梁および内包など白質部で高い分布が見られた.[14C]CV-2619 100mg/kg経口投与15分後の脳内濃度はWKYで0.22~0.39μg/g(CV-2619換算値),脳卒中発症後のSHRSPで0.17~0.28μg/gを示した.一方,腹腔内投与(30mg/kg,i.p.)15分後に行なった脳内未変化体および代謝物組成の分析では,両ラットの大脳皮質,小脳,視床および側坐核で未変化体の高い分布が認められた.脳卒中発症3週間後のSHRSPでは脳内グルコース利用率は脳全体で正常ラット(WKY)の43%まで著明に低下したが,CV-2619 30mg/kg,i.p.の3日間連続投与により43%から65%まで改善された.特に視床背内側核,視床下核,尾状核-被穀,下丘および小脳核で有意な改善作用が見られた,以上の成績を基に本薬の主な薬効薬理作用(SHRSPにおける脳卒中後遺症改善作用,諸種モデル動物における学習・記憶障害改善作用)の脳内作用部位として,脳卒中発現後の神経症状のうち,情動異常の改善作用には,主として,視床背内側核および乳頭体が,また運動機能障害の改善作用には視床下核,尾状核-被殻および小脳核が,また学習・記憶障害改善作用には,大脳皮質,中隔核,海馬,視床背内側核などが関与しているものと推定された.

著者関連情報
© 社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top