日本薬理学雑誌
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ウリナスタチンのショック時エネルギー代謝への効果
佐藤 正巳石川 浩仁保 健溝田 雅洋
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1986 年 88 巻 3 号 p. 195-203

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抄録

ショック時の細胞内エネルギーレベルの低下に対するウリナスタチンの影響を検討した.ウリナスタチン50,000U/kgの静注により,ドラムショック負荷ラットの肝および膵のtotal adenine nucleotides (TA)レベルおよびenergy charge (EC)の低下が改善された.ウリナスタチン3,000U/mlにより,ショック負荷動物血清添加によるラット細切肝組織のECの低下が改善され,また,アプロチニン3,000U/mlによっても細切肝組織ECの低下が改善された.ウリナスタチン1,000U/mlにより,ショック負荷動物血清添加によるラット肝ミトコンドリアの呼吸活性の低下が改善されたが,アプロチニン1,000U/mlでは改善されなかった.ラット正常血清で灌流したラットの摘出肝において,ウリナスタチン3,000U/mlはATPおよびTAレベルならびにECに影響を与えなかった.これらのことより,ウリナスタチンは正常肝エネルギー代謝に影響を与えることなく,アプロチニンと異なってショック下のエネルギー産生低下を回復しえたが,その機序はショック時に血中に遊出されてエネルギー産生を抑制する成分に対する抑制作用および間接的作用としてのadenine nucleotide pool保持作用が寄与しているものと考えられた.

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