日本薬理学雑誌
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ラット血液凝固線溶能に及ぼす四塩化炭素の影響
坂本 浩二大塚 邦子笠原 多嘉子阿部 浩一郎
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1986 年 88 巻 4 号 p. 255-262

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抄録

CCl4肝障害の作用機序,形態学的変化及び生化学的変化に関する報告は多いが,血液凝固線溶能に関するものは少ない,今回,我々はCCl4の血液凝固線溶能に及ぼす影響について検索した.SD系,雄性ラットにCCl4 0.5,1.0,2.0,3.0ml/kgを単回経口投与した.投与24時間後に血液凝固能ではTEG,HPT,TT,PRCT,PT,PTT,フィプリノーゲン,凝固XIII因子,ATIII,線溶能ではPLG,α2PI,肝障害の指標としてGOT,GPT,他にHt,L/B比,血漿総蛋白量を測定した.その結果,血液凝固線溶能は,CCl4投与量の増加に従い漸次,用量依存的に低下した.CCl4 0.5ml/kgではGOT,GPTは高値を示すにもかかわらず,血液凝固線溶能はすべてには著しい変化はみられなかった.CCl4 1.Oml/kgではすべてにわたり,著明な活性の低下を認めた.また,GOT及びGPTはCCl4投与量が1.0ml/kg以上では逸脱が限界に達するのに対し,CCl4投与量とHPT,PTT,PT,凝固XIII因子,PLGの障害比との間には片対数グラフ上で直線関係が成立した.また,CCl4の高投与量でも全身の出血症状及びTEGでの著明な線溶亢進はみられなかった.以上よりCCl4投与による血液凝固障害モデルはCCl4 1.0ml/kg単回経口投与が適していると思われる.

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