日本薬理学雑誌
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Y-8894の薬理学的研究(第3報) ラット内包破壊誘発皮質異常脳波に及ぼす影響
宇佐 輝人森本 保人福田 武美阿南 惟毅瀬戸口 通英丸山 裕
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1986 年 88 巻 4 号 p. 289-297

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抄録

不動化ラットを用い,内包を熱破壊後生じる大脳皮質異常脳波に対するY-8894の作用を定量的脳波解析法を用いて検討し,imipramine,amantadineおよびcalcium hopantenate(Ca-hopantenate)と比較した.内包の破壊により,破壊条件の強さに依存して皮質脳波はdelta(δ)波およびtheta(θ)波のパワーが増加し,60°C,3分の破壊条件では一定した持続性の異常脳波が誘発された.Y-8894(0.1~1mg/kg,i.v.)は,熱破壊によるδおよびθ波のパワーの増加を用量に依存して減少させた.amantadine(10mg/kg,i.v.)はY-8894に比べ弱いが類似の作用を示した.imipramine(1mg/kg,i.v.)およびCa-hopantenate(30mg/kg,i.v.)はδおよびθ波に何ら影響を及ぼさなかった.一方,Y-8894はalpha(α)波およびbeta(β)波のパワーも減少させた.本作用はimipramineおよびamantadineにも認められたが,Ca-hopantenateはβ波のパワーの減少傾向を示したのみであった.以上の成績から,Y-8894は実験的脳障害による異常脳波に対して改善作用を有することが明らかにされた.

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