日本薬理学雑誌
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Azulene誘導体,KT1-32,ラットの各種胃・十二指腸損傷に対する効果
岡部 進竹内 孝治森 吉美古川 修山田 義治
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1986 年 88 巻 6 号 p. 467-476

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抄録

azulene誘導体KT1-32のラヅトの各種急性胃損傷,十二指腸潰瘍,胃液分泌および十二指腸HCO3-分泌に対する効果を検討し,以下の結果を得た.対照薬としてcimetidineを使用した.KT1-32(30, 100 mg/kg)は経口投与によりHCl·ethanol胃損傷を用量依存的に抑制し,その抑制の持続時間は6時間以内であった.KT1-32の抑制効果はindomethacin処置ラットにおいても同様に発現した.KT1-32(100 mg/kg)は経口投与によりHCl·aspirin胃損傷を,十二指腸内投与により幽門結紮-aspirin胃損傷およびShay胃潰蕩の発生を有意に抑制した.KT1-32(30および100 mg/kg×2)の経口投与はmepirizole十二指腸潰瘍の発生を有意に抑制したが,胃損傷には影響を与えなかった.KT1-32(30および100 mg/kg)の経口および十二指腸内投与により幽門結紮法による胃液分泌を用量依存的に抑制した.KTl-32は基礎十二指腸HCO3-分泌およびmepirizoleによるHCl刺激HCO3-分泌の抑制にも何ら効果を示さなかった.cimetidine(200 mg/kg)はHCl·ethano1,HCl·aspirinおよび幽門結紮-aspirin胃損傷の発生を抑制したが,Shay潰瘍には有意の効果を示さなかった.mepirizole十二指腸潰瘍の発生も強力に抑制したが,胃損傷は増悪した.cimetidine(200 mg/kg)は経口投与,十二指腸内投与のいずれにおいても胃液分泌を著明に抑制したが,基礎およびmepirizoleによるHCl刺激十二指腸HCO3-分泌の抑制に対し影響を示さなかった.

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