日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
新しい抗うつ薬Quinupramineの脳波学的研究
渡辺 繁紀太田 尚山下 樹三裕大野 益男谷 吉弘古谷 嘉章植木 昭和
著者情報
ジャーナル フリー

1987 年 89 巻 6 号 p. 339-354

詳細
抄録

慢性電極植込みウサギを用いて,quinupramineの脳波作用をimlpramine,amitriptylineと比較検討した.quinupramineは自発脳波に対して皮質では高電圧徐波化,海馬ではθ波の脱同期化をひきおこし,著明な傾眠パターンを惹起した.この作用はamitriptylineと同程度でimipramineよりはるかに強力である.脳波パワースペクトラムは3薬とも質的にはほぼ同様の変化を示した.またいずれの薬物投与によっても動物は行動上鎮静状態を示し,軽度の筋弛緩,歩行失調が認められた.quinupramineは音刺激および中脳網様体,視床内側中心核,後部視床下部の電気刺激による脳波覚醒反応のいずれも著明に抑制し,覚醒閾値を上昇させた.physostigmineによって誘発される脳波覚醒反応はquinupramineによって著明に抑制され,持続時間は短縮した.これらの脳波覚醒反応に対するquinupramineの作用はamitriptylineとほぼ同程度でimipramineより強力であった.視床内側中心核刺激による漸増反応および,閃光刺激による光誘発反応はquinupramineによってほとんど影響されなかった.海馬,扁桃体の電気刺激による大脳辺縁系後発射はquinupramineによって増強される傾向を示したが,imipramine,amitriptylineでは投与初期には抑制された.以上,quinupramineの脳波作用は全般的にimipramineおよびamitriptylineに類似し,その作用強度はamitriptylineとほぼ同程度でimipramineよりもはるかに強力であった.

著者関連情報
© 社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top