日本薬理学雑誌
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実験的アレルギー性鼻炎モデルにおけるセファランチンの作用機序の検討
河野 浩行井上 肇瀬山 義幸山下 三郎赤須 通範
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1987 年 90 巻 4 号 p. 205-211

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抄録

セファランチン(CR)は,タマサキツヅラフジ(学名Stephania cepharantha)の根茎から抽出されたアルカロイドで,近年では,白血球減少症の予防,円形脱毛症,気管支喘息などの治療に幅広く適用されている.今回,実験的アレルギー性鼻炎モデルにおける抗アレルギー作用の機序を検討した.CRは実験的アレルギー性鼻炎モデルにおいて抗アレルギー作用を示した.CRの局所直接的抗アレルギー作用を検討するためCR溶液を感作ラットの鼻腔へ灌流した.その結果,CRは局所適用する事により,毛細血管からの色素漏出を抑制する傾向にあった.しかし,ライソゾーム酵素活性の漏出は対照群との間に差はなかった.一方,陽性対照薬として用いたケトチフェン(KT)は局所適用でも色素およびライソゾーム酵素の漏出を抑制した.さらに,CRは内因性の血中副腎皮質ホルモン量を上昇させる事が知られているため,副腎皮質ホルモンの合成を局所的に,かつ特異的に阻害するメチラポンを投与した時のCRの効果を検討した.その結果,メチラポン併用により,CRの抗アレルギー作用は減弱した.KTはメチラポン併用,非併用にかかわらず有効であった.従って,本実験条件下では,CRは副腎皮質ホルモンを介し,抗アレルギー作用を発揮したと考えられる.以上から,CRの実験的アレルギー性鼻炎モデルにおける抗アレルギー作用の機序として,内因性の副腎皮質ホルモンの分泌亢進作用と局所に対する細胞膜の安定化作用の両方が関与していると思われる.そして,主に,CRは副腎皮質に対して作用し,抗アレルギー作用を発揮している事はKTと異なり特有な作用である事が示唆された.

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