日本薬理学雑誌
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連続経口投与における三環系抗うつ薬とベンゾジアゼピン系抗不安薬との相互作用
沖山 雅彦上野 光一大森 栄五十嵐 隆北川 晴雄
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1988 年 91 巻 1 号 p. 41-53

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抄録

三環系抗うつ薬とベンゾジアゼピン(BDZ)系抗不安薬の併用による連続経口投与時の薬物相互作用について,imipramine(IM)hydrochloride,diazepam(DZ)およびoxazepam(OZ)を各々単独またはIM hydrochlorideとDZあるいはOZの併用により14日間連続経口投与したSD系雄性ラットを用いて,血漿中濃度および肝薬物代謝酵素系を中心に検討した.DZ濃度の定常状態はIM hydrochlorideの併用経口投与によりDZ単独経口投与時に比較し,高い血漿中濃度を示した.IM hydrochloride,DZおよびOZを単独あるいはIM hydrochlorideとDZまたはOZの併用による14日間の経口投与で前処置した後にIM hydrochloride,DZおよびOZを各々静脈内投与した時のIM,DZならびにそれらの脱メチル代謝物およびOZの血漿中濃度推移を検討した結果,1)IMおよびその代謝物の血漿中濃度は,OZの併用経口前処置により若干の変化が生じる.2)DZ血漿中濃度は,DZ単独経口投与前処置により消失の遅延が認められ,その傾向はIM hydrochlorideの併用経口投与前処置によりさらに増強される.3)OZ血漿中濃度は,連続経口投与前処置の影響を殆ど受けないことが示唆された.肝重量において併用による影響は認められなかったが,肝薬物代謝酵素系はIM hydrochlorideの投与により,cytochrome P-450およびcytochrome b5の比含量,aminopyrine.benzphetamineおよびethylmorphineのN-demethylase活性の上昇が認められた.しかしこのIM hydrochlorideによる肝薬物代謝酵素系の変化は,OZ併用によって影響を受けなかった.さらに肝臓以外の組織重量において併用による薬物相互作用は認められなかった.以上の結果より,OZはDZに比較しIM hydrochlorideとの相互作用を生じる可能性の少ないことが示唆された.

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