日本薬理学雑誌
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Cadralazineの呼吸・循環器系・腎機能・自律神経系・消化器系・血液その他に対する作用
西森 司雄西村 敬治小林 文夫中野 大三郎福田 好造左近上 博司中西 順一木村 恵人辻 治美東尾 尚宏秋田 晶平山内 敏彦黒田 佳代子辻 義章福田 有利子坂口 茂樹中尾 健三犬飼 利也中辻 勝義
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1988 年 91 巻 4 号 p. 221-236

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抄録

cadralazineの薬理作用を呼吸・循環器系・腎・自律神経系・消化器系・血液その他について検討を加えた.cadralazineは麻酔ネコに3mg/kgを静脈内投与した時,呼吸数の増加,血圧の明らかな下降,心拍数の増加および心電図のQT間隔の短縮を示した.5mg/kg以上の経口投与時にも降圧作用が認められた.呼吸・心拍数・心電図には100mg/kg,p.o.での投与でも著明な作用を示さなかった.麻酔ネコにおいて,cadralazine 3mg/kg,i.v.によりadrenalineの昇圧反応は抑制され,acetylcholineの降圧反応は著明な影響を受けなかった.モルモット摘出心房に対し,cadralazineおよび本薬の活性代謝物であるISF 2405は10-4g/mlの高濃度で負の変時作用を示した.cadralazine 25mg/kg,p.o.は麻酔ネコの電気刺激およびadrenaline刺激による瞬膜収縮に対し影響を及ぼさなかった.cadralazine2.5mg/kg,p.o.でマウスの消化管輸送能の抑制がみられたがウサギの生体位腸管運動(100mg/kg,p.o.)および自動運動(10-4M)は影響を受けなかった.ラットの胃液分泌は本薬の5mg/kg,i.d.(十二指腸内投与)以上で抑制されたが,本薬は生体位胃運動,生体位および摘出子宮運動に対し高用量の投与時以外はほとんど影響を及ぼさなかった.cadralazine 2.5mg/kg,p.o.以上でラットにおいて尿量および尿中Na+,K+,Cl-排泄の減少あるいは減少傾向が認められた.cadralazineはラットの血液凝固および赤血球浸透圧脆弱性,ウサギの溶血性および血小板凝集に有意な影響を及ぼさなかった.代謝物ISF2405は溶血性に対して0.Ol%で軽度の0.1~1.0%では中等度の作用を,血小板のarachidonic acid凝集に対しては10-4Mで抑制したが,これはきわめて高濃度であった.cadralazine 5mg/kg,p.o.以上はラットcarrageenin足浮腫に対し抑制作用を示した.以上の作用は定性的にhydralazineとよく類似したものであった.

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