日本薬理学雑誌
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Naftidrofuryl oxalateの脳保護作用 I:両側総頸動脈結紮マウスの延命効果および,エネルギー代謝改善効果
竹尾 聰田野中 浩一平野 智行三宅 慶子岡本 淳子
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1988 年 91 巻 4 号 p. 267-273

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抄録

本研究は,naftidrofuryl oxalate (LS-121)が両側総頸動脈結紮マウスの生存時間と脳エネルギー代謝に有益な効果を示すか否かを明らかにするために企画された.両側総頸動脈結紮マウスの生存時間は100から308秒であった.15,45,100mg/kg,i.p.及び100mg/kg,p.o.のLS-121の投与でその生存時間が有意に延長された.脳アデノシン3燐酸(ATP),クレアチン燐酸(CP)及びglucose含量は両側総頸動脈結紮後2分目で著明に減少した.脳乳酸量は結紮により増加し,一方ピルビン酸量は不変であった。15,45mg/kg,i.p.及び100mg/kg,p.o.LS-121をマウスに前投与すると両側総頸動脈結紮により誘発されるマウス脳ATP,CP量の減少は有意に抑制された.結紮により誘発されるglucose量の減少及び乳酸量の増加は45mg/kg,i.p.LS-121処置により減弱される傾向を示した.45mg/kg.j.p.LS-121前処置,あるいは未処置下における両側総頸動脈結紮により変化する代謝変数値の経時的変化を追うと結紮により減少する脳高エネルギー化合物の有意な抑制が観察された.上記結果は,LS-121が虚血マウス脳エネルギー代謝に有益であることを示唆している.この効果が生存時間延長に関連あると思える.

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