日本薬理学雑誌
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気管支拡張薬,Oxitropium bromide(Ba 253)の一般薬理作用
喜多川 久人竹田 富美代林 利浩泉田 雅代公平 宏
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1988 年 92 巻 1 号 p. 49-60

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抄録

抗コリン作用を有する気管支拡張薬,oxitropium bromide(Ba 253)の呼吸器,循環器,生殖器および泌尿器系に対する作用をipratropium bromide(Sch 1000)およびatropine sulfateと比較した.Ba 253は麻酔ネコにおいて低用量(0.1~0.3mg/kg,i.v.)で心拍数の増加を,高用量(3mg/kg,i.v.)で犬およびネコにおいて血圧下降を示したが,高濃度(1,10%)のエアロゾル吸入でも麻酔犬,覚醒ウサギの心拍数に影響を及ぼさなかった.Ba 253は高濃度でモルモット摘出心房におけるisoproterenolの陽性変力作用および摘出ウサギ血管における弛緩作用を増強した.Ba 253はSch 1000およびatropineと同様に,皮下投下によりマウスの小腸輸送能を抑制したが,経口投与では作用しなかった.Ba 253およびSch 1000は,高用量(1~30mg/kg,i.v.)の投与により,ラット生体位子宮運動を亢進させたが,エアロゾルの吸入ではこの様な作用を示さなかった,一方,Ba 253は,ウサギ摘出胸部大動脈の収縮反応,ウサギ摘出回腸の自動運動,およびラット胆汁分泌,尿排泄,膀胱運動などに対しては何ら作用しなかった.以上のように,Ba 253は静脈内あるいは皮下投与により,Sch 1000と同様に血圧下降作用,心拍数増加作用,小腸輸送能抑制作用,また子宮運動亢進作用を示したが,高濃度のエアロゾル吸入あるいは経口投与では,循環器系および子宮運動に対する作用は認められなかった.

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