日本薬理学雑誌
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ラットの実験的健忘モデルにおける Naftidrofuryl oxalate(LS-121)の作用
亀山 勉鍋島 俊隆加藤 晃小川 伸一
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1988 年 92 巻 4 号 p. 241-250

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抄録

受動的回避学習法を用いて,cycloheximide(CXM,1.5mg/kg),scopolamine(SCOP,1.5mg/kg)及びbasal-forebrain(BF)破壊(1.2mA D.C.for 15sec)誘発健忘モデルラットに対する naftidrofuryl oxalate(LS-121)の抗健忘作用を,Ca-hopantenate(HOPA)及びphysosdgmine(PHY)の抗健忘作用と比較検討した,保持試行においては暗室に入るまでの時間(step-through latency: ST潜時)を最高600秒まで測定し,300秒以上のST潜時を示したラットの割合〔基準到達率(%)=100×(300秒以上のST潜時を示したラットの匹数/実験に用いたラットの匹数)〕を求めた.なお被験薬投与群の両指標と健忘モデルのそれらとの間に有意差が得られた場合は学習・記憶改善作用陽性とし,片指標にのみ有意差がみられた場合は学習・記憶改善傾向とした.CXM 及び SCOP 誘発健忘モデルに対してLS-121(25mg/kg)及びPHY(0.1mg/kg)は獲得試行前,直後及び保持試行前のいずれの場合に投与しても学習・記憶改善作用陽性又は改善傾向を示し,HOPAはCXM誘発健忘モデルに対して獲得試行直後の場合にのみ改善傾向を示し(200mg/kg),SCOP誘発健忘モデルに対し獲得試行前の場合にのみ改善傾向を示した(400mg/kg).BF破壊誘発健忘モデルに対して,LS-121は獲得試行直後の場合にのみ改善傾向を示し,PHYは獲得試行前及び直後の場合に改善傾向を示した.今回の結果より LS-121は,acetylcholine 作動性神経系を直接的又間接的に活性化することにより抗健忘作用を発現すると考えられた.一方,保持試行前に投与した場合にも有効であった為,健忘がすでに起きている場合にも改善作用を示す可能性が示された.また,BF破壊誘発健忘モデルに対して抗健忘作用を示した為,Alzheimer型老年痴呆の患者に対しても治療効果を示す可能性が示唆された.

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