1988 年 92 巻 4 号 p. 251-261
抗悪性腫瘍剤 adriamycin(ADR)の低用量をマウスに長期間投与することにより造精機能障害を誘発し,この障害に対する TJ-41の効果を精巣の組織学的解析により検討した。ADRは0.15mg/kgを週2回の割合で5週間腹腔内投与した.また,TJ-41は1,2および4g/kgを ADR の初回投与日よりそれぞれ12週間連日経口投与した.TJ-41 4g/kg併用投与群の精巣重量は,ADR単独投与群のそれに比較し有意に(P<0.05)高値を示した.さらに精巣の組織学的解析を行ったところ,ADR単独投与群では,精細胞がすべて消失しセルトリ細胞(支持細胞)のみとなった精細管が16.3%であったのに対し,TJ-41 1,2および 4g/kg併用投与群のそれは,5.8%(P<0.01),9.7%および6.4%(P<0.01)にそれぞれ減少した.また ADR 単独投与群では障害を受けていない精細管,すなわち,spermatids の段階9~12と段階13~16を認めた精細管が14.5%と36.0%であったのに対し,TJ-41 1,2および 4g/kg併用投与群では,それぞれ20.1%と47.8%(P<0.01),16.0%と45.5%,15.6%と54.1%(P<0.01)に増加した.さらに,TJ-41 1,2および 4g/kg併用投与群の spermatocytes の sertoli cell ratio の対数値は,それぞれ0.23(P<0.05),0.13および0.27(P<0.05)であり,ADR単独投与群におけるその対数値0.04に比べ高値を示した.以上のことから,TJ-41は ADR によるマウス精巣の造精機能障害に対し,質的および量的に効果を示すことが示唆された.