日本薬理学雑誌
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マウスにおける NC-1100; 1-(3,4-Dimethoxyphenyl)-2-(4-diphenylmethylpiperazinyl)ethanoldihydrochloride の行動薬理作用:移所運動活性および非連続回避反応に及ぼす効果
栗原 久田所 作太郎
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1989 年 93 巻 4 号 p. 245-253

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抄録

NC-1100;1-(3,4-dimethoxyphenyl)-2-(4-diphenylmethylpiperazinyl)ethanol dihydrochloride の中枢作用を,マウスの移所運動活性,およびレバー押し型およびシャトル型非連続回避反応を指標にして検討した.NC-1100 の 3~100mg/kg,p.o.を単独投与しても,移所運動カウント数に著しい変化が認められなかった.しかし,100mg/kgを投与すると,振戦,間代性けいれん,唾液分泌の増加などを主徴とする全身症状の悪化が出現したが,死亡例はなかった.低用量(3および10mg/kg)の NC-1100 は methamphetamine(2mg/kg,s.c.)の移所運動活性促進効果を軽度に増強したが,scopolamine(0.5mg/kg,s.c.)のそれには著変を及ぼさなかった.一方,NC-1100 の 10mg/kg は,シャトル型回避実験での反応率を有意に増加させたが,100mg/kgではレバー押し型およびシャトル型非連続回避反応のいずれにあっても回避反応を抑制した.レバー押し型非連続回避反応でみると,NG-1100 の 10および30mg/kg は chlorpromazine(1mg/kg,s.c.)の回避反応抑制効果を軽減する傾向があった.また,シャトル型非連続回避反応の訓練開始直前に NC-1100 の 30mg/kg を投与すると,生理食塩水投与による対照群の成績を上回る回避率の上昇が観察された.しかし,同時に10~30mg/kg は反応率も増加したので,NC-1100 に特異的な回避反応習得促進効果があるとは断定できなかった.本結果は,NC-1100 が行動促進的作用を発揮するが,メタンフェタミンのような典型的な中枢興奮薬とは異なり,その効果はかなり軽微であることを示唆している.

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