日本薬理学雑誌
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食塩負荷 SHR における Budralazine の脳障害発症予防効果
田中 覚石原 正直芝村 誠一関口 富士男広橋 正章白崎 康文明石 章
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1989 年 94 巻 1 号 p. 49-60

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抄録

高血圧自然発症ラット(SHR)に1.5%の食塩水を負荷することによって発症する脳血管障害に及ぼす抗高血圧薬,budralazine の影響を検討した.本病態モデルでは食塩負荷によって負荷40日目をピークに収縮期血圧の急激な上昇(253±8mmHg)を来し,それに伴って脳軟化および梗塞巣が60%,脳実質内出血が40%の動物にそれぞれ発生するとともに脳細動脈の血栓および壊死を併発した.また,腎臓においても血管系に硬化性病変が90%の動物に認められるとともにこれに付随して間質性変化が観察され,いわゆる悪性腎硬化症の病像を呈した.食塩負荷と同時に budralazine(1,4 および 15mg/kg/day)を連続経口投与すると,対照群でみられた血圧の急激な上昇は用量依存的に抑制され,40日目の収縮期血圧値はそれぞれ238±7,208±7(P<0.01)および 189±4mmHg(P<0.01)であった.また,組織学的検索において 4mg/kg/day以上の投与では対照群で観察された脳および腎臓における病変の発生がほぼ完全に抑制された.さらに,本薬剤は脳および心臓の重量増加を有意に抑制するとともに,病態発生に伴う血清コレステロールおよびトリグリセライドの上昇も有意に抑制した.また,実験期間中に対照群では半数の動物が死亡したが,budralazine 投与群では死亡例を認めなかった.一方,hydralazine(1,4 および 15mg/kg/day)投与群では,脳および腎障害あるいは血清生化学的変化に対して budralazine と類似した予防効果を認めたにもかかわらず,実験期間中に3匹の動物が死亡した.以上の成績より,budralazine は本病態モデルにおける脳血管障害および腎病変の発症を予防することが明らかとなった.また,この予防効果は主として本薬剤の抗高血圧作用にもとづくものと推察された.

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