日本薬理学雑誌
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四塩化炭素誘発急性ならびに慢性肝障害に対するラエンネックの作用—静脈内と皮下投与による比較
中山 貞男山内 真由美小口 勝司
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1989 年 94 巻 2 号 p. 137-144

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抄録

CCl4 誘発急性ならびに慢性肝障害ラットに対するラエンネック(ヒト胎盤水解物)の作用を静脈および皮下投与によって比較検索した.CCl4 0.5ml/kg,4日間経口投与で作製した急性肝障害において,ラエンネックの静脈投与は肝総蛋白を増加,遊離脂肪酸を減少し,皮下投与ではリン脂質の減少を抑制した.ラエンネックの静脈および皮下投与はともに CCl4 による血清 GOT,GPTの増加を抑制し,静脈投与ではアルカリ性ホスファターゼの増加も抑制した.肝組織学的にはラエンネック 1.0ml/kgの静脈および皮下投与が CCl4 でみられた中心静脈周囲細胞の細胞質と核の脱落による空胞化,膨化変性と壊死を抑制した.CCl4 0.5ml/kg,週2回,7週間経口投与で作製した慢性肝障害において,ラエンネックの静脈および皮下投与は CCl4 による血清 GOT,GPT の増加を抑制した.肝組織学的にはラエンネックの静脈および皮下投与が CCl4 でみられた小葉内細胞の細胞質と核の脱落による空胞,壊死変性と核の膨化を抑制した.CCl4 による小葉間結合織増殖に対するラエンネックの作用は軽度であり,偽小葉形成は抑制されなかった.実験的肝障害に対して,ラエンネックの静脈投与は皮下投与と同様の改善作用を示した.

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