日本薬理学雑誌
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麻酔犬の心血管系に対する PGI2 誘導体,Beraprost sodium(TRK-100)の作用
西尾 伸太郎松浦 博敏服部 雅一遠藤 孝山田 尚弘平野 哲也村井 健宮尾 佳伸叶井 友子梅津 照彦
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1989 年 94 巻 6 号 p. 351-361

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抄録

麻酔犬において prostacyclin(PGI2)誘導体,beraprost sodium(TRK-100)の血管および心臓に対する作用を検討した結果,動脈内投与では,椎骨動脈,冠動脈,肝動脈,脾動脈,腎動脈,腸間膜動脈,大腿動脈を 0.003~3,000μg/血管床の用量範囲で用量依存的に拡張させた.腸間膜動脈および脾動脈の血管を他の臓器よりやや低用量(0.03μg/血管床)から拡張させたが,特に強い血管選択性は見られなかった.静脈内投与では頸動脈および腸間膜動脈血流を増加させ,それぞれ最大増加は TRK-100(2.5μg/kg)で 28.9% および 93%,PGI2(1.25μg/kg)で2 9.9% および 79% であった.腎動脈血流についてはそれぞれ最大増加は 18.4% および 35% であった.一方,椎骨動脈および大腿動脈血流は両薬物(0.078~2.5μg/kg)の静脈内投与で減少した.この減少は拡張反応閾値の低い動脈の血管拡張による影響であると考えられる.血圧に対しては TRK-100 および PGI2 はそれぞれ 0.078 および 0.156μg/kg以上の静脈内投与で用量依存的な降下を引き起こした.心拍数に対しては両者ともやや増加させ,最大反応は TRK-100(2.5μg/kg)で投与前値の 10.5%,PGI2(1.25μg/kg)で17.0% 増加であった.この作用は血圧低下の影響による反射と思われる.心機能に対する作用については,PGI2 および TRK-100 は 0.3μg/kg以上の静脈内投与で左心内圧およびその上昇速度を抑制し,30μg/kgでは投与前の約47%に低下した.心拍出量に対する最大抑制は24%程度の弱い抑制であった.冠血流量に対して PGI2 は 0.3μg/kgから,TRK-100 は 30μg/kg から有意な低下作用を示し,3 および 100μg/kgではそれぞれ41%および33%低下させた.心仕事量についてはそれぞれ 0.1 および 1μg/kgから抑制した.酸素消費量は PGI2 で 3μg/kg,TRK-100 で 30μg/kg から有意な低下が見られた.総末梢抵抗はそれぞれ3μg/kg から低下し,30μg/kgでほぼ最大となり約50%の低下がみられた.以上の結果から TRK-100は PGI2 と同様に強い末梢抵抗血管拡張作用を持ち,直接的な心抑制作用はないものと思われる.

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