日本薬理学雑誌
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生体位ラット膀胱内圧へ及ぼす自律神経系を中心とした薬物と加齢の影響
豊嶋 穆小野寺 禎良吉永 雅一武永 邦三内山 利満
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1990 年 96 巻 3 号 p. 103-115

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抄録

成熟雌ラット(11~23週齢)で膀胱内圧に対する自律神経系を中心とした薬物の作用を検討し,さらに老齢ラット(2年齢)を用いて加齢の影響についても検討を加えた.acetylcholine(ACh),seroto-nin(5-HT),prostaglandin F(PGF)およびATPの静注は用量依存的な膀胱内圧上昇を示したが,histamineでは変化を示さなかった.AChによる内圧上昇はpirenzepineに比ぺてatropineにより,より強く抑制され,主にM2受容体を介することが示唆された.またAChの内圧上昇はhexamethonium,guanethidine,diphenhydramine,cyproheptadineの前処置により一部抑制された.adrenaline(Adr)静注は低用量で内圧低下,高用量で内圧上昇を示し,noradrenalineおよびphenylephrine静注でも内圧の上昇がみられたがclonidine静注では全く作用を示さなかった.これらの内圧上昇反応は主にα1受容体を介することが示唆された.isoproterenol(IPr),salbutamo1およびclenbuterol静注は用量依存的で同程度の内圧低下を示し,IPrの内圧低下作用はatenolo1よりもpropranololにより,より強く抑制されたことより,主にβ2受容体を介することが示唆された.ATP静注は内圧を上昇させたがadenosineでは全く作用を示さなかったことより,P2受容体を介することが示唆された.老齢ラットでは成熟ラットに比べてAChの最大反応が著明に低下しAdrの低用量による内圧低下がみられなかった.以上の結果は,成熟ラットでの内圧上昇作用はコリン作動性M2受容体が優位で,これに5-HT,アドレナリン作動性α1およびプリン作動性P2受容体なども関与し,アドレナリン作動性薬物による内圧低下は主にβ2受容体を介することを示唆する.また,老齢化によりAChの反応性の著明な低下とβ受容体反応性の若干の低下が示唆された.

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