日本薬理学雑誌
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各種起炎剤による足浮腫炎症における神経関与の違いについて
大久保 つや子柴田 学高橋 宏
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1990 年 96 巻 5 号 p. 243-253

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抄録

formalin(0.5%),crotonoil(1%),mustardoil(1%),carrageenin(1%),dextran(1%),eggwhite(15%)のマウス(25μl)及びラット(100μl)足臆への皮下投与による浮腫形成において,知覚神経の関与とりわけsubstance P(SP)含有神経の役割を中心に検討した.1)formalin浮腫は,坐骨神経を大腿部で切断したラットにおいて,起炎後4時間目まで有意な抑制を見たが,伏在神経切断では逆に増強する傾向を認めた.しかし,carrageenin浮腫では,両神経切断による有意な変化は認められなかった.2)3日前にcapsaicinを坐骨神経に処置したマウスでは,formalin,crotonoil,mustardoilによる足浮腫の初期が有意に抑制され,carrageenin,dextran,eggwhiteによる浮腫では有意な変化はみられなかった.起炎5分前にspantideo.1mg/kgをi.v.投与したマウスにおいても,それぞれの起炎剤による足浮腫において同様の結果を得た.3)血管透過性を観察すると,formalin,crotonoil,mustardoilで,0~10分を最大値とする強い色素漏出が認められ,これはspantide0.lmg/kg,i.v.によって拮抗された.しかし,carrageenin,dextran,eggwhiteでは,色素漏出は非常に少なく,spantideによっても影響を受けなかった.4)マウス足蹠のlicking,bitingを指標とする痙痛反応では,formalin,croton oil,mustard oilの場合,二相性に経過する強い反応が見られ,これらはspantideによって抑制された.carrageenin,dextran,eggwhiteでは,疹痛反応は殆ど見られなかったが,eggwhiteを除く全ての起炎において疹痛過敏を認めた.以上のことから,formalin,ctotonoil,mustardoilでは,一次知覚神経末梢端から遊離するSPが,強い血管拡張,透過性充進などの血管反応や,疹痛反応を発炎初期に生み出すが,carrageenin,dextran,eggwhiteで,これらの機序とは違った経過で炎症反応が進行することが示唆された.

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