日本薬理学雑誌
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FOY-305の術後逆流性食道炎に対する作用(第2報)
胃全摘後のラット逆流性食道炎発生機序の解析
上安 功明井尻 章悟大廻 長茂桶川 忠夫川崎 晃義
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1991 年 97 巻 5 号 p. 251-257

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抄録

胃全摘後の逆流性食道炎の発生要因としては,膵液および胆汁の食道内への逆流が重要である.我々は,すでにFOY-305がラットの胃全摘後の食道炎に対し有効であることを第1報で示した.そこで,今回は胃全摘,食道空腸吻合術(Billroth-II法)を施行したラットの食道内洗浄液中のtrypsin活性および胆汁酸濃度に対するFOY-305の効果を検討した.その結果,FOY-305は投与開始2および4時間後でtrypsin活性を完全に抑制した.一方,胆汁酸濃度に対しては,4時間後で対照群に比し有意に低下させた(P<0.05).さらに,我々はtrypsinとsodium taurocholate(Tc-Na)のラット摘出食道に対する傷害作用についても食道粘膜からのtyrosineの遊離を指標に検討した.Tc-Naは腸液中のその濃度の3倍の用量でもわずかな傷害作用しか示さず,trypsinと共に作用させても相乗的な作用を認めなかった.一方,trypsinは明らかに食道粘膜からのtyrosineの遊離を惹起したが,この作用はFOY-305(50μM)により有意に抑制された(P<0.001).以上の結果は,食道炎の発生因子としてのtrypsinの重要性を示唆するものであり,また,trypsin阻害剤であるFOY-305が本病態に対して抑制効果を有することを説明するものである.

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