日本薬理学雑誌
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薬物性腎障害ラットの貧血に対するRecombinant human erythropoietin(SNB-5001)の貧血改善効果
升永 博明高比良 玲子沢井 忠則
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1991 年 98 巻 2 号 p. 151-160

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抄録

Wistar系雄性ラットを用い,薬物性腎障害貧血モデルを作製した.抗悪性腫瘍剤であるcisplatinを8mg/kgの用量で静脈内投与すると,―過性に白血球と血小板の減少および血液の濃縮が認められ,2週目から腎障害と貧血を持続した.またアミノヌクレオシド抗生物質であるpllromycinを15mg/kg/dayの用量で週4回ずつ3週間繰り返し皮下投与すると,投与期間中から終了後2週目まで高脂血症および低アルブミン血症の腎障害と進行性の重篤な貧血を呈した.これらの動物を新しい腎性貧血モデルとして,recombinant human erythropoietin(SNB-5001)の有効性を検討するために,50および500U/kgのSNB-5001を皮下または静脈内に7日間繰り返し投与した.cisplatin腎障害ラットの貧血では50および500U/kgの投与で,赤血球数,ヘモゲロビン,ヘマトクリット値および網状赤血球数の用量依存的な増加が認められた.―方,puromycin腎障害ラットの貧血では,50U/kgの投与では,網状赤血球数のわずかな増加は認められたが,赤血球数ヘモグロビンおよびヘマトクリット値の増加は認められなかった.この貧血の進行に対し,500U/kgの用量では明らかな抑制作用が認められた.SNB-5001は,薬物性腎障害に誘発された貧血に対しても有用であることが示唆された.網状赤血球の増加を指標にSNB-5001の作用強度を比較すると,cisplatin腎障害ラットの貧血に対する造血作用は,pllromycin腎障害ラットの貧血に対する作用に比べて強く,貧血改善状態も長く持続した.尿毒症や腎性貧血の状態などの病態の違いが,SNB-5001の作用の発現に影響する可能性が示唆された.

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