日本薬理学雑誌
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KB-2796のIn vitroおよびIn vivoにおける抗血小板作用
山本 紀子横田 耕一山下 明伊藤 敬三
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1991 年 98 巻 5 号 p. 337-344

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抄録

Ca拮抗薬KB-2796(1-〔bis(4-fluorophenyl)metlly1〕-4-(2,3,4-trimethoxybenzyl)piperazine dihydrochloride;)の血小板機能に対する作用をモルモットおよびマウスを用いて検討した.モルモット多血小板血漿を用いたin vitroの実験では,血小板機能は高用量のKB-2796により抑制された.すなわち,collagen誘発〔3H〕5-HT放出に対するIC50値は940μMであり,collagen誘発およびADP誘発血小板凝集のIC50値はそれぞれ210および390μMであった.また,in vivoにおいてcollagenをモルモットの静脈内に投与した時に惹起される一過性の血小板減少に対して,KB-2796は10~100mg/kgの経口投与で用量依存的な抑制を示し,30mg/kg以上で溶媒投与群との間に有意差が認められた.しかし,ADPによる血小板減少に対しては抑制作用を示さなかった.マウスにcollagenとepinephrineを静脈内投与した時に惹起される血栓性致死に対して抑制作用を示し,ED50値は9.5mg/kg,p.o.であった.KB-2796はSalzman法改良法によるガラスビーズカラム通過時の血小板の粘着を10~100mg/kgの経口投与で用量依存的に抑制し,100mg/kgで溶媒投与群との間に有意差が認められた.このときカラム通過に伴って赤血球から放出されるADPおよびATPの増加が抑制された.KB-2796はモルモット赤血球の低張溶血を1~10μMで有意に抑制した.以上の結果から,KB-2796は血小板機能を抑制する作用を有しており,その作用には赤血球からのADPおよびATPの放出抑制が関与していることが示唆された.

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