日本薬理学雑誌
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Hydrocortisone負荷ラット背部皮膚円形切除創モデルに関する基礎的検討
吉田 昭彦荒木 智子小俣 武志山口 格松田 和夫栗本 忠田頭 栄治郎
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1991 年 98 巻 5 号 p. 369-377

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抄録

ラット背部皮膚に円形切除創を作製し,cortisoneを負荷した治癒遅延モデルの創傷治癒過程について肉眼的,生化学的ならびに病理組織学的観点から基礎的検討を行うと共に酸化亜鉛軟膏の影響についても併せて検討した.1)hydrocortisone sodium phosphate(HC-P)およびcortisone acetate(CA)はいずれも50mg/kg/day,s.c.投与により8日目の創傷部面積の縮小を有意に抑制したが,体重増加の抑制はHC-Pの方がCAよりはるかに軽度であった.2)HC-P(50mg/kg,s.c.)処置の創傷部面積と創傷部hydroxyproline(Hyp)量の経日変化では4~14日目において創傷部面積縮小の有意な抑制が,8日目では創傷部Hyp量の有意な減少が認められた.3)HC-P(50,75mg/kg,s.c.)は8日目において体重増加,創傷部面積の縮小および創傷部Hyp量の増加を用量依存的に抑制した.また,病理組織学的検索においても毛細血管の新生,線維芽細胞の増殖,および膠原繊維の増生等を抑制し,用量依存的な肉芽形成の抑制が認められた.4)組織計測においてHC-P(50mg/kg,s.c.)は傷害部(IZ)および未表皮被覆部(UZ)の縮小を抑制した.5)HC-P(50mg/kg,s.c.)処置により惹起した創傷治癒遅延モデルにおいて,酸化亜鉛軟膏は創傷部面積の縮小の遅延および創傷部Hyp量の減少を明らかに改善した.以上の結果より,本研究で作製したラット背部皮膚円形切除創HC-P負荷モデルはCA負荷よりも全身症状が比較的軽度で,創傷治癒剤の効果判定に際し,肉眼的(創傷部面積),生化学的(創傷部Hyp量),病理組織学的パラメーターから評価され得る有効なモデルであることが確認された.

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