日本薬理学雑誌
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ヒスタミンのイヌ腸間膜動脈および静脈に対する作用機序の比較
山崎 正昭戸田 昇
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1992 年 99 巻 1 号 p. 19-26

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抄録

ヒスタミンの血管弛緩作用機序を摘出イヌ腸間膜動・静脈条片を用いて比較検討した.プロスタゲランジン(PG)Fで収縮させた腸間膜動脈条片において,ヒスタミンは5×10-7M以上の高濃度では急速に現れる弛緩とこれにつづくゆっくり安定する弛緩をひきおこした.速い相の弛緩はcimetidineの影響をうけず,chlorphenhamineで抑制された.両者を併用処置するとヒスタミンの弛緩作用は消失した.安定相に対してはcimetidilleで抑制が強かった.内皮除去による抑制は,速い相で著明であった.indometllacin処置は,内皮正常標本において速い相の弛緩を抑制したが,内皮除去標本では有意な抑制はみられなかった.内皮正常標本でindomethacinにcilnetidineを追加処置すると,ヒスタミンの弛緩はさらに抑制されたが,indometllacinにchlorpllenhgamineを処置しても変化はみられなかった.一方,静脈でもヒスタミンは用量依存性の弛緩作用を示したが,同作用は内皮除去,indomethacinおよびchlorpheniramineでは影響をうけず,cimetidineで消失した.これらの事実より,ヒスタミンは動脈では内皮細胞のH1受容体を刺激しPGI2の遊離を介して平滑筋を弛緩させ速い相の弛緩を引き起こし,また,平滑筋のH2受容体を刺激して持続性の弛緩をひき起こすと結論される.一方,静脈ではヒスタミンは平滑筋のH2受容体を介する機序のみで弛緩をひき起こす.

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