日本薬理学雑誌
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Oxiracetam(CT-848)の脳内コリン作動性神経系に対する生化学的研究
望月 大介杉山 祥子篠田 芳樹
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1992 年 99 巻 1 号 p. 27-35

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抄録

脳内アセチルコリン作動性(ACh)神経系に及ぼすoxiracetamの影響について検討した.1)ムスカリン性アセチルコリン受容体(mACl1R)を認識する3H-QNB結合に対して,oxiracetamは高濃度(10mM)を用いてもラット大脳皮質および海馬膜標品において阻害能を示さなかった.2)3H-QNB結合のcarbacholによる阻害曲線に対して,oxiracetamは影響を与えなかった.さらに,GppNHpによるoxotremorine結合抑制に対してもoxiracetamは影響しなかった.3)ラット海馬薄片標本における25mM K+刺激誘発AChの放出に対して,oxhacetam10μMないし100μMは有意にその放出を増強した.4)若年ラット海馬薄片をoxiracetam 10μMないし100μM存在下で2時間灌流させるとコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)活性の有意な上昇が認められた.5)oxiracetamの老齢ラットへの連続投与(100mg/kg/dayないし500mg/kg/day,p.o.)により,大脳皮質,海馬および線条体のChAT活性が有意に上昇した.しかしながら,oxiracetam連続投与によりChAT活性の上昇が認められた海馬においてmAChRの変動を調べたところ,3H-QNB結合に対するBmaxおよびKdに変化を認めなかった.6)マウス脳ホモジネートでのアセチルコリンエステラーゼ(AChE)活性に対し,oxiracetamは阻害作用を示さなかった,以上のことから,oxiracetamはコリン作動性神経系の前シナプス部に作用しその活動を賦活する可能性が示唆された.

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